« October 2008 | Main | March 2009 »

秋田県公文書館の『岡本元朝日記』

 吉良上野介の人物について記載があるということで最近よく取り上げられるものに岡本元朝日記がある。岡本は秋田佐竹家の家老だった人物で、日記は秋田県公文書館の所蔵。これがよく知られるようになったのは、昨年12月に同館の『古文書倶楽部』20号で紹介されてからのことらしい。恥ずかしながら未見であったが、館のサイトにPDF文書があることに気がついた。
 http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1144808186646/files/komonjokurabu020.pdf

 なかなか興味深い。記事は江戸大番頭・渋江十兵衛の書状(元禄14年3月17日付、同24日着)の要約である。注目されているのは、吉良について「日頃かくれなきおうへい人」という噂、ことに「物ヲ方々よりこい取」という強欲ぶりである。もっともせびり取る品物が雪舟の三幅対だったりするから、強欲というよりも強烈な芸術嗜好だったかも知れない。
 それ以上に面白いのが刃傷の「実況中継」である。渋江情報では浅野に切りつけられた吉良が刀に手をかけ「何をするや」と取って返し反撃しようとしたのを、畠山民部らが取り押さえ「内匠殿は乱心だから」となだめた、とある。これでドラマを作ったら大ブーイングだろうな。もちろん梶川与惣兵衛の証言とも食い違い、事実だと認められる訳ではない。もしこれが事実だったら、浅野だけ切腹では大誤審だ。ただ、こういうイメージで語られたのは、同時代の武士たちがこの事件を「殿中の喧嘩」と認識していたことの表れだろうし、何となく浅野びいきの風潮が生まれてくる原因にもなったのではないだろうか。
 ここで紹介されているのは、浅野刃傷事件についての情報だけだが、翌年12月の討ち入りについては何の記載もないのだろうか。秋田には、宝井其角から情報を得た梅津半右衛門もいたはずである。二人で敵討論をかわした様子なんか記されていたら面白いだろう。
 ともかくも、こうした貴重な資料がWEB上で公開されていることはまことに欣快である。さらに言えば岡本日記そのものも翻刻されたり、WEB公開されたら嬉しいのであるが・・・。

(追記)
 同館の『古文書倶楽部』22号には、『梅津忠昭日記』に記された浅野刃傷事件が紹介されている。
 http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1144808186646/files/komonjokurabu022.pdf
出典は『秋田史談会記事』で、明治44年の史談会例会に郷土史家の東山多三郎が持ってきたものだという。事件についての情報は、『岡本日記』に比べれば正確で、そのぶんつまらないとも言える。しかし、この梅津忠昭、まさに其雫・梅津半右衛門その人ですよね?うーん、これも討ち入りについての記述を見てみたい。
 『倶楽部』によれば現在確認できるのは抄本で、原本は行方不明の由。無事見つかることを祈ってやまないものであります。

| | Comments (3) | TrackBack (0)

« October 2008 | Main | March 2009 »